kmn.1  山岸凉子「アラベスク」 

                発表年 ’71年

花とゆめコミックス 第1部全4巻、第2部全4巻
白泉社文庫第 1部全2巻、第2部全2巻
りぼんマスコットコミックス 全4巻
サンコミックスペシャル 全2巻
アスカコミックススペシャル「山岸凉子全集全32巻」中、10〜15巻


わたしが一番最初にハマった漫画。人生ではじめて読んだ漫画は何だったか覚えてないが(つるピカハゲ丸くんだった気はする)、最初に夢中になったのは

間違いなく「アラベスク」。出会いは13年程前
当時小学4年生だったわたしはバレエを習い始めたばかりで(クラシックではなくモダンバレエなのだけど)したが、

近所の古本屋に行った時、見覚えのある言葉がタイトルに掲げられた漫画を見つけたのですよ。漫画の最初にもあるように「アラベスク」というのはバレエの

基本的なポーズの一つなので、超初心者のわたしでもタイトルだけで飛びつくことが出来ました。生まれながらに夢見がちで妄想好きだったわたしですから、

いとも簡単に「アラベスク」に夢を見てウットリしてました。

その時古本屋で買ったのは花ゆめコミックスだったのだけど、その時点でも古い本だったのに、今ではわたしがしょっちゅう読む所為もあって凄くボロボロに

なってしまって、ページがごっそりはずれている箇所がいくつもあるげど、やっぱり花ゆめ版がわたしの宝物です。


ストーリー
 キエフ・シェフチェンコバレエ学校でバレエを習う16歳のノンナ・ペトロワは自分はバレエに向いていないと思いこんで

 いたが、レニングラード・キーロフバレエのダンサーで、ソビエトの金の星と言われるユーリ・ミロノフに才能を見いださ

 れレニングラード・バレエ学校に編入する。ミロノフ先生の厳しい特訓の末、学生でありながらレニングラード・キーロフ

 バレエ団の新作バレエ「アラベスク」の主役、モルジアナに抜擢される(アリババ役はミロノフ)。

 意 地悪なライバルが出てきたり、先生を好きになってしまうが先生は相変わらず厳しくて悩んだり、というオーソドック

 スな展開だけでなく、ノンナの精神的な成長+バレリーナとしての成長も描かれた素敵な少女漫画。


      *レニングラード・キーロフバレエ団というのは、キーロフバレエ団(現在はマリインスキーバレエ)のこと。
          「アラベスク」には出てこないが、レニングラードバレエ団というのは旧マールイバレエ、現ムソルグスキー記念
          サンクトペテルブルグ国立アカデミー・バレエのこと。現在は都市名が変わった為にバレエ団名も変更されている
          が、日本ではまだレニングラード・バレエの名前を使ってる。 ややこしい。

         *レニングラード・バレエ学校というのは、ワガノワ・バレエ学校のこと。ワガノワバレエ学校からは、レニングラード
          にもキーロフにも行ける。才能があれば。


しかし、最初と最後では大分絵が変わりましたね。最初の頃は顔やポーズが割と記号っぽく描かれてました。あ!花ゆめ版1,2,4巻に収録されている、

「栄光のグリーンフィールド」「ハローヤングヤング」「ミスめがねはお年ごろ」「あしたは青空」
は、「アラベスク」以前の作品で、絵も話もホントに昔の少女漫画!

記号的!と言う感じだが凄くおもしろい!ホントに幅広く描いてますね。

        

わたしは今でもバレエを続けているのですが(ねばった甲斐があってアシスタントにになれた)、妄想と現実の区別も巧く付けられる様になった今読んでも充分に

おもしろい。「アラベスク」を読んで自分を励ましたりするくらい(そう言えば、松岡修三さんも試合前にエースをねらえ!を読んで志気を高めたと言っていたな)。

漫画だから頭身が人間離れしているのは置いといて(ほとんどの男性ダンサーはあんなに細くないだろうよ)、絵がなかなかに現実に忠実だと思う。バレエを

習っている人は目が行くのではと思うが、脚の形やポーズなんかが巧くて美しいなぁと見入ってしまう。バレエをテーマに描かれた他の人の作品では「この人

(作者)こんなにバレエのこと知らないのに、何でバレエ漫画描いてんだろう」と思うような絵を描く人もいるのでね。自分が深く関わってることをテーマにした漫画

って、細かいことも気になって、些細なことで冷めちゃったりしませんか?


実在のダンサーも何人か出てきたりするし、ラーラとノンナの「瀕死の白鳥」の勝負のシーンでミロノフ先生が言う「レニングラードの優雅さはすべてをおし殺した

中にあるんだ ボリショイのそれとはちがう」という台詞も頷いちゃいます。実際ボリショイのダンサーは「瀕死〜」に限らず割と大振りで、何故か顔も濃い。という

のがわたしの印象。レオも「ふ・・・む ハデだな」とラーラに言っているが、存在が派手なんだなー.。そんなとこも含めてバレエ作品やテクニックの紹介も入って

たりするし、興味はあるけどバレエを知らない人も読んだら良いと思う。なんだかんだで今に至っても「アラベスク」以上のバレエ漫画は無いとわたしは思う。

ミロノフ先生かっこよすぎ。ノンナもとても好感が持てるし。山岸凉子さんは雰囲気を出すのが巧いな、と思う。


山岸さんは、わたしが一番好きな、尊敬する漫画家。崇拝して心酔してます。他にも一杯発表したい作品はあるけど、もったいないからちょっとずつにする。 

山岸さんは扉絵も素敵です。画集もわたしの宝物です。山岸さんの絵を巧いというと、反論する人も大勢いると思うが、誰がなんと言おうとわたしは巧いと思う。



 「アラベスク」に登場する実在のダンサー
イリーナ・コルパコワ キーロフ・バレエのプリマバレリーナだった。87年引退。実在するダンサーのなかで唯一の主役級。
レニングラード関係者、ミロノフの知人として登場。ノンナのアドバイス役的存在。ノンナと踊ったりも
している。
マーゴ・フォンティーン イギリスのサドラーズ・ウェルズ・バレエ団(現英国ロイヤルバレエ)のプリマだった。名前だけ登場。
セミョーノフ コルパコワの旦那さん。
マリー・タリオーニ パリ・オペラ座のダンサーだった。ノンナがシルフィードを踊ることになった時に名前が出てくる。
モイラ・シアラ サドラーズ・ウェルズバレエのプリマだった。バレエ映画「赤い靴」に主演し、世界的に注目されたが
その重圧でつぶれてしまう。ノンナが「まるでモイラ・シアラね」と噂されているのを聞いてショックを
受ける。名前だけの登場。
ザポトキナ ソビエトの有名なキャラクター・ダンサー。と漫画に出てくるが、わたしは詳しいことはしりません。
名前だけ。
ヴァツラフ・ニジンスキー 超有名なロシアの天才ダンサー。アラベスクの改訂版をミロノフ先生が踊ったときに、男性ダンサーの
見せ場である跳躍を除いて踊った為「ニジンスキーの再来だ」というようなことを言われる。名前だけ。
マイヤ・プリセツカヤ ボリショイのプリマバレリーナ。大スター。現在79歳(多分)だが、現役で踊っている。さすがに全幕物
はやらないけどね。 チャイコフスキーコンクールの審査員として名前が出てくる。
アリシア・アロンソ キューバを代表するバレリーナ。チャイコフスキーコンクール審査員として登場。
ノンナの金賞受賞を発表する役。
*タチャーナ・タヤーキナさんとボリシャコワさんとクレール・モットーさんは、実在の人なのでしょうか?
  知ってる人いますか?


                                         *ほぼ、登場順


 「アラベスク」に登場する実在のバレエ作品
作品名 役名など ダンサー名 踊った状況
白鳥の湖 アダージョ ノンナ キエフでの7年生への進級テストの課題。ミロノフ先生と踊る。
黒鳥のVa' ノンナ バレエ学校に来て最初に踊らされた。
村娘の踊り ノンナetc 8年生のレッスン中に踊る
オデット(全幕) アーシャ キーロフバレエ団の定期公演で、初の主役。
ところが妊娠が発覚しオディールはヴェータがやることに。
オディール ヴェータ ↑アーシャの代役で、オディールのみ踊る。
パ・ド・トロワ ノンナ
コルパコワ
エーディク
↑のアーシャが主役の時に踊る。
黒鳥のパ・ド・ドゥ ノンナとレミル チャイコフスキーコンクール(バレエのです)2次予選
ロットバルト エーディク キーロフバレエ団の定期公演で。
他の日にはジークフリートも踊るらしい。
瀕死の白鳥     × アーシャ 抜き打ちテストの課題で。
    × ノンナとラーラ 映画版「アラベスク」の主役を決める勝負で。
レ・シルフィード イリーナ(姉) キエフでの8年生への進級テストの課題。
せむしの仔馬 海と真珠 ミロノフ
マイヤ
アリサ
授業かなんかで踊る。
タイトルロール ヴェータ 卒業コンサート。
火の鳥 アダージョ マイヤ モスクワバレエコンクールで。
真夏の夜の夢 小悪魔パック ノンナ 同上
くるみ割り人形 パ・ド・ドゥ ワレリー
リュドミラ組
チャイコフスキーコンクール1次予選で。
ラ・フィーユ・
  マル・ガルテ
パ・ド・ドゥ ノンナ、レミル組 同上
ガヤネー(ガイーヌ) パ・ド・ドゥ ボリシャコワ
ミロノフ
踊ったらしい。衣装を着ている。
海賊 グラン・パ・ド・ドゥ ノンナ達 9年生のグラン・パの授業で。
ワレリー・リュドミラ組はコンクールでも踊る。
ラ・シルフィード パ・ド・ドゥ ノンナ、レミル組 チャイコフスキーコンクール最終選で。練習風景も沢山。
ロミオとジュリエット クッションを持つ踊り ノンナ達 9年生の授業で。
マーキュショウ エーディク 北欧公演などで。十八番らしい。
バフチサライの泉      ? アーシャ モスクワコンクールで。
眠れる森の美女 青い鳥のグラン・パ ミロノフ ミロノフ先生の家でビデオを見る。
パ・ド・ドゥ ミロノフ
ボリシャコワ
ミロノフ復帰特別公演で。後ろでノンナがコールドを踊る。
オーロラ コルパコワ キーロフバレエのストックホルム公演で。
パ・ド・ドゥ ワレリー
リュドミラ組
チャイコフスキーコンクール2次で。1次でも踊ってる人がいる。
春の水 パ・ド・ドゥ ミロノフ
ラーラ
なにか踊って見せてくれと言われて。
チャイコフスキーコンクールでも踊ってる人がいる。
ジゼル 全幕 オリガ等 ノンナがお世話になった地方のバレエ団の公演。
ノンナもオリガ先生の代役で踊る。
第2幕 クレール・モットー パリ・オペラ座公演で。
金鶏 全幕? ノンナとワシリー等 オリガ先生のいるバレエ団の公演で。
途中でワシリーとミロノフ先生が入れ替わって踊る。
ラウシンシア ヴァリエーション 8年生の生徒 抜き打ちテストの課題。
ファデッタ 村祭りの踊り ノンナ、ヴェータ等 同上
ライモンダ ヴァリエーション ナタリア
卒業コンサートでこれを踊る、といって踊ってみせる。
ヴェータもそれを真似して踊る。
ドン・キホーテ グラン・パ・ド・ドゥ ノンナ達 9年生のグラン・パの授業で。
グラン・パ・ド・ドゥ ミロノフ
ボリシャコワ
ミロノフ復帰特別公演で。
グラン・パ・ド・ドゥ ニーナ
エルショワ組
チャイコフスキーコンクールの1次で。
最近分かったのですが、「金鶏」は山岸凉子さんのオリジナルだそうです。創造。



 アラベスク 人物関係図  




レッスンウェアコレクション

ここでは、バレエを習う方の為にノンナとラーラのレッスンウェアを集めてみました。参考にしてみて下さい。

ラーラのレオタードは個性的ですね。ヘアスタイルも派手です。ノンナもそうですが、こんな頭でお稽古に臨んだら怒られます。

レッグウォーマーの使用は殆ど見られませんね。ロシアは寒いのに。

それぞれについているページ数は、掲載した絵が載っているページです(花ゆめコミックス版・全8巻)。だいたいがそのページ周辺では同じ恰好をしています。

また、同じ(型の)レオタードが何度も出てくることもありますが省略しています。スカーフをまいたり、のバリエーションも同じです。

ちなみに、絵は、遥cpによる模写です。難しい!






 好きなシーン

練習でラ・シルフィードのパ・ド・ドゥを踊る
ノンナとミロノフ先生


第2部3巻 P122

コンクールでブラックスワンのパ・ド・ドゥを踊る
ノンナとレミル


第2部4巻 P97


踊りのシーンから選んでみた。ノンナとミロノフ先生だったら、アラベスクのシーンでも良かったんだけど、シルフィードはやっぱ

クライマックスだし、綺麗だからこっちにした。しかし、途中で絵を書くのが面倒になってしまい、ノンナの腕飾りと、スカートの薔薇

が無くなってしまいました。ごめん、ノンナ。

ノンナとレミルに関しては、わたしはレミルが大好きなので、レミルとのシーンを、と思っていたのだ。本当なら、こっちでシルフィード

を選ぶのが自然な流れなのだけれど、わたしとしては、この二人の黒鳥が見たいのだ!きっと素敵だと思う。1次で踊った

ラ・フィユ・マル・ガルテも、凄く良いと思う。特にレミル!それにしてもかわいそうなレミル。なので、ここでフューチャーします。