kmn.10  藤川佳世「かたつむり前線」

花とゆめコミックス 全7巻


この漫画は、4年くらい前に誰かの推薦文を何かで読んで買ったもの。

高校生が主人公の漫画を読むと、高校生に戻りたくなる。高校生活って、もっといろいろ楽しめるものだったんだなー、というのを漫画から学んだ。

わたしの高校生活は、別に漫画になるような素敵なことは特に無かった。バレエとか漫画とか音楽とかには夢中になってたけれど。でも、水面下

では、とっても充実してたよ。友人に恵まれてたから。思いっきり趣味に走れた。でも、かたつむりに変身する友人がいる人には敵わないか・・

ともかく、風呂場で超根暗な遊びに夢中になってた人とか、宇宙を見つめる素敵な先生(一部に大人気。わたしもその一人)がいたりとか、霊感が

強くて病弱な軽井沢系クラス担任(良い人)にお世話になったりだとか、お化け屋敷つくりに励んだりとか。いつもじゃんけんで負けて委員長やる

はめになったりとかして、それなりに充実してたよ。今思えば。高校生って、それだけでなんか輝いていて、卒業して6年ほどたった今、高校生なんて

まぶしくて近寄れやしない!



ストーリー
 陸上部の佐倉高範くんに片思い中の若森朝子は、ある日偶然、ストレスがたまるとかたつむりに変身してしまう、成績

 優秀スポーツ万能で顔も良い
梶原篤士が、かたつむりに変身しているところに出くわす。それ以来、変身時の梶原の

 世話をするはめになった朝子。佐倉くんとこの梶原くんは、同じ陸上部で親友同士なのだが、後にこの梶原の秘密を

 知った佐倉も、一緒に世話をやくことに。偶然とは言え、佐倉くんと仲良くなれて浮かれる朝子。しかし、梶原くんは、

 いつも放課後、部活中の佐倉くんを見つめる朝子に恋をしていたのだった。そんで、梶原くんと朝子(とちょい佐倉くん)が

 それぞれ恋に悩んだり、将来のこと、友人関係のことでなやんだり、梶原くんがかたつむりになることで、色んなハプニング

 が起きる。というのが基本のストーリー。




わたしはもともと、あんまり漫画にリアリティを求めるタイプではないのだけれど、梶原くんの「ストレスがたまるとかたつむりに変身してしまう」

という凄い設定も、なんだか自然に読めてしまう。藤川さんの漫画は、わりと自然な感じで読めるものが多くて好感が持てます。

それ以外の設定は、わりと普通の現代の少女漫画という感じですが、梶原くんが良いタイミングで変身します。また、三人の恋の行方が

一応メインのテーマですが、万能の梶原くんの秘めた精神世界もフューチャーされていて、なかなか興味深いです。

しかしね、佐倉くん影薄すぎ!一応メインの登場人物なはずなんですが、なんとも印象が薄い。良い人なんだけれどねー。

わたしの個人的な趣味からしても、朝子がなかなか梶原くんに気持ちを向けない気持ちが分かりません。梶原くんのほうが興味深い人間

なのに!一応最後は、梶原の想いが実ったことを案じさせる描写になってますが。


脇役も沢山出てきます。みんな佐倉くんよりキャラが濃い。不憫だな、佐倉くん。

ショタコンの鈴野ゆかり先生とか、上下関係バカの鹿上隼人とか、朝子の親友で剣道部部長の渡辺芙美(美人)とか、梶原のストーカー

加納美苗とか、梶原嫌いの梶原くんの妹、有里とか、朝子のいとこの黒沢貴一(いっちゃん)とか。この人たちのその後も知りたい。

ついでに佐倉くんも・・・鹿上と芙美はどうなったのかしら。気になる。


凄くおもしろい漫画なんだけど、もっとそれぞれに突っ込んでたらもっとよかったかな。とは思います。佐倉くんのキャラとか。





かたつむり前線人物関係図


「陸上部」しか、書くことのない佐倉くん、かわいそう。しかし、朝子も似たようなものだった。

部活もやってないし、強調してる特技とかもないし、つまんない女ではないのに、いざ簡潔に書こうと思うと

書くことが無かった。もしや、主人公は梶原くんか?

この図だけ見ると、すごくベタな設定っぽい。「前から好き」とか「親友」とか、「お互い好き」とか。

なんとなく恥ずかしい・・・





梶原変身ファイル


ページ 場所 備考
 学校の運動場のそば  かたつむり姿のまま初登場。朝子と初対面。
 2日後、放課後の2年8組の教室で元に戻る。
49  学校の屋上  風邪で熱が38度あり、その上いろいろ頼まれごとをされたストレスで
 変身。1日後かたつむりを持ち帰っていた朝子の部屋で戻る。
(68)  学校内  2時間目から行方不明になる。発見されたときには、生物部の実験に
 使用するために冷凍されていた。1日で戻る。
(93)  梶原家  妹の有里が梶原の食事に混ぜ物をしたストレスで。
 1日後、学校の女子トイレで戻る。
159  学校の廊下  不安に襲われて変身。
(170)  学校内  佐倉とけんかして変身。1日後に教室で戻る。
(12)  部室棟への通路?  朝子のじいさんの3回忌のために岐阜に行く時に、うっかり梶原(かたつむり)
 も連れて行ってしまい、慌てて帰ってきた高速道路のサービスエリアで元に
 戻る。1日で戻った。
62  梶原の家の前  日々の些細なストレスによる。
(68)  話の最初からすでにかたつむりになって登場。おそらく1日で戻った。
138  図書室の前  朝子が臨時剣道部員をやってたことを秘密にしていたことに、苛立ってか?
 3日で戻る。長かった理由は、朝子が佐倉に告白まがいの発言をしたから
 だと思われる。
27  佐倉の母が経営する喫茶店  大掃除中に変身。やりたくないことをやらされたから?
55  朝子の家の近所  いっちゃんの存在に何か嫌なものを感じて。12時間くらいで戻る。
(106)  梶原の家?  疲れから。
158  公園  新クラスになって、クラス委員になって、親睦会の花見の準備(場所取り)
 をさせられたストレスから。
4 33  多分屋上  朝子と仲良くしてる鹿上への嫉妬。1日で戻る。
73  すでにかたつむり。1日で戻る。
(194)  学校内  体育祭の準備で疲れた。
60  学校近辺?  将来の不安から?
121  安心したら変身した。気が緩んだんだろう。
155  佐倉の母の店のトイレ  風邪。1日弱で戻る。
(78)  風邪。1日くらい。
(5)  梶原家  文化祭の準備の疲れ。8時間くらい?で戻る。
195  高校のグラウンド  1年ぶりに朝子と再会し、ついに想いを告げ、その緊張感からか、言えた
 安心感からか、変身。ここで漫画が終わってしまうので、いつ戻ったかは不明。


こうやって見ると、数えるほどしか変身してないね。しかも、変身理由を並べてみると、「万能な梶原」という表の顔とは違い、精神的弱さが

理由からも読み取れます。時には安心感から変身したりもしてるので、なかなか厄介な体質。

6巻は、番外編が多いので、あまり変身してません。


ちなみに、ページ数の( )がついている箇所は、変身シーンは描かれていない時です。中のページ数は、かたつむり姿で登場したページです。