kmn.12  武内昌美「おしゃべりなアマデウス」

フラワーコミックス 全12巻 
  小学館文庫 全6巻


今、クラシックブームが来てるらしい。わたしが住んでるところは田舎なので、クラシックブームを感じさせる出来事などまるでお目にかかれなくて残念であるが、

CD屋では、クラシックの名曲100というようなCDが、異例の大ヒット!なんてニュースを目にする。

わたしは常日ごろから、人と何かを共有することに執着して生きているのだけれど、未だクラシック音楽に関して、感情を共有できて、話ができる人が身近に居らず、

淋しい思いをしているというのに!早くわたしの周りにも、ブームの波が来れば良いのに。


このクラシックブームに一役買っている(これが発端だという話もあるが)のが、二ノ宮知子さんの「
のだめカンタービレ」であり、漫画のほうも当然売れてるわけで、

わたしもコミックスのみですが、楽しく読んでいます。凄く面白いし良い作品なので、ここで紹介したいですが、基本的に漫画は連載が終わってみないと評価は

できない、といいう考えから、「漫画に挑む」に紹介する漫画は、既に連載が終わっているものに限ることにしています(今後例外が出てくるかもしれないけど)。

そこで、他の好きなクラシック音楽漫画を紹介しよう、と思い立ったわけで、この「おしゃべりなアマデウス」なわけです。




ストーリー
 幼い頃に、音楽家だった両親を亡くした碧川里緒(みどりかわ・りお)は、母の親友であった緒方実穂子の家に引き取られた。

 実穂子はヴァイオリン教室を開いていて、里緒の幼馴染であり、実穂子の息子、緒方羽宗(おがた・うそう)は、名門、沢村音楽学院で
 
 前代未聞の1年次にアメリカ留学に推薦されたほどの天才ヴァイオリニスト。

 その羽宗が1年間のアメリカから帰ってきたのを期に、里緒も本格的にヴァイオリンの道を進むことを決意し、沢村音楽学院に入学する。

 そこで、幼い頃から一緒にヴァイオリンを弾いてきた羽宗だけが気付いていた、里緒のヴァイオリンの才能が開花する。




こういう漫画を読むと、なんでわたし、ヴァイオリンを習わなかったんだろう!と激しく後悔する。

ピアノもかっこいいけれど(勿論他の楽器もね)、ヴァイオリンは割りと簡単に持ち運べるところが良い。漫画の中でも、里緒たちは、しょっちゅう街角で

突然ヴァイオリンを弾いたりしてるし。羨ましいな〜。しかし、里緒はよく階段から落ちるよね。


絵に関しては、好き嫌いは分かれるかと思う。わたしも、絵だけ見たらそんなに好きではない。話も、単純と言えば単純ではありますが、なんか惹き

つけられるんだよね。何だろう?武内さんの漫画は、割りにわたし好みのテーマが多いのは確かなんだけど、オーソドックスなところが魅力なのかも。

定番どおり、ライバルが現れたり、ライバルにイジワルされたり、怪我したり、演奏に対して悩んだり、里緒と羽宗の恋愛があったり、恋のライバルも

現れたりしながら里緒がヴァイオリニストとして成長して行くわけですが、里緒が強くて弱い人なのが良い感じです。

ただ、時々里緒の「うーちゃぁん」というのが気持ち悪かったりもします。しかし、武内さんの漫画の主人公の女の子は、可愛くて強くて、揺らがないから好き。

可愛さも含めて、凄く憧れます。

でも、作者による、里緒たちの弾く曲の選曲も好感がもてるし、ヴァイオリンを弾く姿が美しいことは、凄くポイント高い!

そう、ヴァイオリンを弾く人間の姿って、凄く高貴で美しいと思うのです。ピアノと違い、すっと立って左斜めを向いてヴァイオリンを構えた姿。弾き出して

からの動きも美しい。それがわたしは大好きなので、ヴァイオリンには特に憧れるます。ピアノは少々弾けるのですが、わたしはよくヨダレを垂らして

しまうので美しくありません。わたしに限ったことですが、残念です。





おしゃべりなアマデウス 登場曲リスト


曲名 作曲者 演奏者・状況・その他備考 ページ/巻
ツィゴイネルワイゼン サラサーテ 新聞に、アメリカ留学中の羽宗の記事があり、そこに「15歳の完成されたツィゴイネル〜
という特集が組まれているようだ。
19/1
実穂子の誕生パーティーで、客が羽宗にリクエストをした内の1曲。
実際弾いたかは不明。弾いた確率は高い。
146/1
ブラームスの子守唄 ブラームス 留学から帰ってきた羽宗が、里緒の為に弾いた。 33/1
里緒が、ユージーンの為に弾いた。 66/11
モーツアルト 羽宗が学校で練習している楽譜に「モーツアルト」と書いてある。 45/1
ユーモレスク ドヴォルザーク ストリートライブをやっていた少年が、里緒のリクエストにこたえて
弾いた。
65/1
クライスラー編曲。多分ドヴォルザークのこのユモレスクだろう。
里緒がリハビリの為に通う病院で、里緒が演奏会を開いた時に弾いた。
38/10
ayser ? 実穂子が里緒に嫌がらせで持たせた楽譜に書いてあった。
人の名前かもしれない。
92/1
タイスの瞑想曲 マスネ 里緒が新入生歓迎会の新入生代表演奏での練習と本番で弾いた。
本番では、伴奏ピアニストが実穂子に頼まれて、途中で伴奏を放棄
したので、途中からヴァイオリンソロになってしまう。
108,121/1
コンクールの2次予選で里緒が弾く。 100,122/2
里緒がリハビリの為に通う病院で、里緒が演奏会を開いた時に弾いた。 38/10
三重奏
「偉大なる芸術家の思い出」
チャイコフスキー 新入生歓迎会の演奏の練習で。多分本番も弾いたでしょう。
羽宗と優花がヴァイオリン、貴暉がチェロ
113/1
(多分)交響曲第1番 ブラームス 実穂子が友人と行った、ケルン=フィルのコンサートで演奏されたらしい。
友人と感想を言い合っている。
136/1
ラ・カンパネラ (ラ・カンパネルラ)
ヴァイオリン協奏曲第2番」第3楽章
「小さい鐘のロンド」
パガニーニ
右のリンクは、リストの
ピアノ版です
実穂子の誕生パーティーで、客が羽宗にリクエストをした内の1曲。
多分、上のツィゴのほうを弾いたんだと思う。
146/1
東都新聞主催の学生コンクールで弾くため、里緒が選んだ曲。 47,61,164/2
序奏とタランテラ サラサーテ 東都新聞主催の学生コンクールの1時予選での里緒の選曲。 89/2
愛の挨拶 エルガー 羽宗のリサイタル用のレパートリー。リサイタル用の練習で弾く。
これを弾く時には里緒の写真を立てて弾く。
「愛のあいさつ」は、エルガーが自分の奥さんに送った、愛のこもった曲だからです。
117/2
軽井沢での合宿中に、羽宗が庭で弾く。 175/3
テレビ番組に羽宗が出た時に、里緒のために弾いた。 173/10
ヴァイオリン協奏曲 サン=サーンス 里緒の母、千明が沢村音楽学院定期演奏会でのソロに選ばれた、
という張り紙が掲示板にしてある。
協奏曲の1番か2番かは不明。
146/2
アヴェ・マリア 里緒の母、千明が学生時代に弾いた。誰のアヴェ・マリアかは不明。 146/2
ハンガリー舞曲第1番 ブラームス 軽井沢音楽祭で、指揮・羽宗、ヴァイオリンソロ・里緒で、編成された
沢村記念オーケストラによる演奏曲目。
40,86/3
交響曲第8番 ドヴォルザーク 上に同じ 40,86/3 
22/4
ヴァイオリン協奏曲ニ長調 チャイコフスキー 上に同じ。 40,86/3
更に、ソリストに相応しいかテストの為に弾くことにもなった。その練習と、
母千明のレコードで、この曲を聴いている。
46,58,66/3
22/4
メヌエット モーツアルト 合宿先のホテルで、堂本が弾く。どのメヌエットかは不明。 111/3
荒城の月 滝 廉太郎 合宿先のホテルで、同じく羽宗が弾いた。 115/3
シューベルトの子守唄 シューベルト 堂本が、弟の弘基のために弾いた。 142/3
2つのヴァイオリンのための
協奏曲
バッハ クリスと羽宗、羽宗と里緒の2組のバターンで演奏。する予定だった。がハプニング
があり、2回とも里緒がファースト、羽宗がセカンドで弾くことに。
プラハ=フィルの来日コンサートでの演目。指揮はロビン=メイゼル
59,73,81121,
151,164/4
交響曲第?番 ブラームス プラハ=フィルの来日コンサートでの演目。指揮はロビン=メイゼル。
第何番かは不明。
72/4
わが祖国 スメタナ プラハ=フィルの来日コンサートでの演目。指揮はロビン=メイゼル 72/4
わが祖国より「モルダウ」。麻里と里緒が病室でCDを聞く。 82/7
メンデルスゾーン プラハ=フィルの来日コンサートでの演目。指揮はロビン=メイゼル
何の曲かは不明。
72/4
交響曲第?番 マーラー 上に同じ。 72/4
ブルックナー 上に同じ。 72/4
ヴァイオリンソナタ第1番 ブラームス 羽宗のCDに収録するために、長野の教会で録音した。 112/5
スケルツォ ブラームス 麻里が、法月先生の初レッスンで弾いた。
ピアノ曲のスケルツォ?編曲?それとも協奏曲の中のどれか?不明。
146/5
チャールダーシュ モンティ 麻里と里緒が、JYO(ジャパンユースオーケストラ)コンペ用に選んだ自由曲。
ワザと同じ曲にした。
159/5
29,55/6
ヴァイオリン・ソナタ バッハ 元々、里緒がJYOコンペで自由曲に選ぼうとしていた曲。 159/5
ヴァイオリン・ソナタ
   第8番第1楽章
ベートーヴェン JYOコンペの予選課題曲。里緒や麻里も弾いたはず。 171/ 5
星に願いを ディズニー 麻里が好きな曲。ストリートや海などで弾く。 109/6 28/7
JYOのコンサートのアンコールで里緒が、亡くなった麻里の為に弾いた。 156/7
スペイン交響曲 第1楽章 ラロ 麻里のJYOコンペ本選1次の選曲。 44/7
ヴァイオリン協奏曲 第1楽章 シベリウス 里緒のJYOコンペ本選1次の選曲。 60/7
ヴァイオリン協奏曲 第1番 
第1楽章
メンデルスゾーン JYO採集審査の曲。
病気のため、一旦出場を取り消した麻里が、里緒の計らいで、里緒と一緒に
出てきて、二人で弾く。カデンツァは麻里のソロで。更に、羽宗が指揮を振る。
68,91,117/7
 
JYOのウィーンでのコンサートで、コンペでソリストに選ばれた里緒が弾いた。 154/7 133/8
交響曲第7番 ベートーヴェン JYOコンペでソリストに選ばれた里緒が、JYOのコンサートで弾いたっぽい。 153/7
指揮者のマイヤーが急病で倒れたため、ウィーンフィル定期演奏会に
ソリストでで出ることになっていた羽宗が急遽指揮を務めた。
28/11
威風堂々 エルガー 正式には、行進曲「威風堂々」。JYOの海外遠征後の最初の地、ロンドン
での演目。里緒はソリストではなく、第1ヴァイオリン(*1)、コンサートマスター
(*2)として参加。
10,39,
シャコンヌ バッハ ウィーンフィルのコンサートマスター、ヒンツさんの誕生日パーティーで
里緒が弾いた。
66/8
里緒が、ウィーン・コンクールで選んだ2次用の曲。 58/11
テロに巻き込まれて怪我をした羽宗が収容された病室で里緒が弾いた。 168/11
パッサカリア ヘンデル ウィーンフィルのメンバーの前で、羽宗と田原が、田原の留学テストの
為に演奏。羽宗がヴィオラパートを弾く。
178,184/8
弦楽六重奏 
   第1番 第2楽章
ブラームス 里緒がたまたま入ったケーキ屋でかかっていた曲。 50/9
カノン パッヘルベル 腕を怪我して落ち込む里緒のために、羽宗とストリートライブしていた
ヴァイオリン男が、即興で二重奏した。あの有名なカノン。
86/9
里緒と羽宗の結婚式当日、指揮が始まる前に2人で弾いた。ラストシーン。 139/12
グリーンスリーブスによる
幻想曲
ウィリアムズ 左手薬指・小指が動かなくなった里緒が、残りの指だけでヴァイオリンを
弾く決意をし、学校に残るために受けたテストで演奏。
156/9
ヴァイオリン協奏曲 ベートーヴェン ヨーロッパでの羽宗とウィーンフィル共演のコンサートでの演目。 179/9 61/10
アヴェ・マリア グノー 里緒がリハビリの為に通う病院で、里緒が演奏会を開いた時に弾いた。 38/10
イザーイ ヨーロッパでの羽宗とウィーンフィル共演のコンサートでやったらしい。
クラシック好きの記者が言っている。
61/10
感傷的なワルツ チャイコフスキー 羽宗のCDに収録されている。 70/10
無伴奏ソナタ
(無伴奏ヴァイオリンソナタ)
バッハ ウィーン国際音楽コンクールの課題曲。里緒も出場するために弾く。 90/10
24のカプリース 第24番 パガニーニ 手を怪我しても見てもらえる里緒に嫉妬した、他のヴァイオリン科の生徒
たちに、「技巧的な曲も弾いて見せろ」といわれて、里緒がレッスン中に弾いた。
119/10
里緒がウィーン国際音楽コンクール、2次用に選んだ曲。もしかしたら
この時は24番じゃないかもしれない。
58/11
メタモルフォーゼン R=シュトラウス 指揮者のマイヤーが急病で倒れたため、ウィーンフィル定期演奏会に
ソリストでで出ることになっていた羽宗が急遽指揮を務めた。
28/11
協奏曲 バルトーク 上に同じ。
ヴァイオリン協奏曲かは不明。他の協奏曲かも。
28/11
ツィガーヌ ラヴェル 里緒がウィーン国際音楽コンクール、1次用に選んだ曲。 39/11
ソナタ チャイコフスキー 里緒がウィーン国際音楽コンクール、2次用に選んだ曲。
多分ヴァイオリンソナタなんだろうけど、該当曲が見当たらない。
わたしの勉強不足?
58,139/11
バッハ ユージーンを励ますために、里緒がストリートで弾く。 47/12
ヴァイオリン協奏曲 ブラームス ウィーン国際音楽コンクールの最終審査の曲。自由曲か課題曲かは不明。 95/12



*1 第1ヴァイオリン・・・  管弦楽では、ヴァイオリン郡を2つのパートに分けていることが多い(多いというか、普通そうだ)。
 
                  それの第1部の(人たち)ことを第1ヴァイオリンという。勿論、もう一方を第2ヴァイオリンという。

                  第1ヴァイオリンは、旋律を担当することが多く、オーケストラの花形であると言える。

                  弦楽四重奏、五重奏などの小規模なアンサンブルでは、大抵(普通)ヴァイオリンは2人いるが、

                  そのうちの主奏者を第1ヴァイオリン、もう一人を第2ヴァイオリンという。


*2 コンサートマスター・・・  concertmaster 略してコンマス。

                   オーケストラのメンバー全体のリーダー役。第1ヴァイオリンの中の主席奏者が務める。
 
                   コンチェルトなど以外での、曲中のヴァイオリンソロは、このコンマスによって演奏される。

                   つまり、一番上手い人。

                   コンマスは、指揮者(特にゲスト指揮者)とオケメンバーのつなぎや、練習時などに指揮者の

                   代わりも務める。全体をリードしたり、練習をまとめたり、忙しい役職である。人徳もないと

                   みんながついてきてくれない。だから率先して練習したりしないとならないし、オケが駄目な時

                   には、みんなを代表して指揮者に怒られる役だし。

                   また、ブラスバンド(金管+打楽器バンド)等でのこの役をバンマスという。

                   中・高での吹奏楽部にもコンマスは存在する。何を隠そう、わたしはコンマスだった。

                   技術の程はともかくとして、人徳なんて無いのになぜ!

                   わたしの中学では、コンマスになる人の楽器は特に決まってなかったが、ある程度みんなが

                   納得する技術のある人が選ばれるでしょう。わたしはホルンでした。

                   ただ、部活での場合、当然「部長」というのがいて(副部長もいる)、この人は、部のまとめだけ

                   でなく、演奏にまで一番大きな権限をもっているのである。部長のみでななく、副部長もである。

                   そんなバカな!わたしの、コンマスの、立場はいったいなんなんだ。
                   



この曲を里緒や羽宗が弾いたらどんな感じかな?と想像すると楽しい!

里緒と麻里のメンコンは想像し易い。二人のタイプにあってる気がする。羽宗のツィゴイネルも同じく。里緒の24のカプリスも素敵そう。

羽宗の愛の挨拶と、麻里、里緒のチャールダーシュは、あまり想像がつかないので、是非聞いてみたい。無理だけど。悔しい。



わたしが一番好きなシーンは、うーちゃんが「愛のあいさつ」を演奏する時に、里緒の写真をピアノの上に置く、っていうところ。

単純に、そういう状況に対する憧れもあるんだけれど、それだけでなく、なんかヴァイオリンを弾く人同士、クラシック音楽を愛する者同士に

のみ存在する、感情の共有、というところに凄く惹かれるし、羨ましい。お互いに「愛のあいさつ」を演奏する意味を知っていて、それを受け止め

られる、という関係に憧れる。他の誰でもなく、里緒のためだけに、っていうのがね。 

このシーンは、里緒は覗き見してただけで、この時点では共有ではないのだけれど、羽宗の「愛のあいさつ」に答えて、里緒が「タイスの瞑想曲」

を弾く、というのこの関係!もう、本当になんでわたしはヴァイオリンをやってなかったんだろう!せめて、わたしの為に「愛のあいさつ」を弾いて

くれる人が欲しい! でも、答えが「タイス」って、里緒は迷ってるみたいじゃん。そうじゃないのにさー。

   「愛のあいさつ」「タイスの瞑想曲」の解説は、上の表のそれぞれのタイトルからどうぞ。


そのシーンだけじゃないけれど、わたしは後半はずっと泣きっぱなしで読むことになる。何かを創り出せる、って何て素敵なんだろう。でも、素敵

な反面、「表現する」ことを突き詰めなければならないジャンルに携わったら、苦しいことも一杯あって、それでも好きで好きで、どうしても

やめられなくて、という気持ちが、わたしには里緒程の素晴らしい才能は無いけれど、それでもそういう気持ちが半分くらいは分かるから、

余計涙が止まらない。ついでに鼻水も止まらない。うーちゃん、いい男だしね。

里緒が、「バイオリン弾きしか愛せない」と言った気持ちも良く分かる。勿論わたしは「バイオリン弾きしか〜」ってことはないけど、やっぱり何かを

創り出す人にしか魅力を感じることができない気持ちが分かる。この世界にいる人にしか分かり合えない感情って、言葉じゃないから本当に濃くて、

素敵で、癖になるといったら言い方悪いけど、とにかく普通では味わえない感覚で、そういう気持ちをほんの少々でも分かれるわたしは幸せ者

だな、と思う。


この漫画のタイトルは「おしゃべりなアマデウス」ですが、アマデウスとは、今更言うまでもないですが、モーツアルトの名前です。モーツアルトの

フルネームは、ヴォルフガング・アマデウス・モーツアルト(Wolfgang Amadeus Mozart)。そこからとっています。

「アマデウス」とは、神に愛される、という意味だそうで、モーツアルトも勿論音楽の神に愛されていましたが、里緒も同じように、音楽の神に

愛されているわけで、「アマデウス」なんですが、タイトルの割にはモーツアルトの作品を演奏するシーンは少ないです。メヌエット1曲こっきり

です。ラストシーンは、羽宗と里緒の結婚式で、二人は控え室で一緒にパッフェルベルの「カノン」を弾くのですが、「おしゃべりなアマデウス」

であるからには、何かモーツアルトの曲を弾いて欲しかったです。なんだろう?「フィガロの結婚」の序曲とか?でもそれじゃ、これから結婚式

ってときには合わないし・・・

「カノン」は、結婚式にはマッチしてます。だからといって、パッフェルベルからとって「おしゃべりなヨハン」ってのも分かりにくいし、ヨハンなら

バッハやシュトラウスの方が断然有名だし。一番演奏してるのはブラームスの曲だけれど、「おしゃべりなヨハネス」ってのも、ヨハンと大して

変わんないし。

おしゃべりなニコロ(パガニーニ)とか、おしゃべりなピョートル(チャイコフスキー)とか、おしゃべりなジャン(シベリウス)、おしゃべりなエドワード

(エルガー)とかだと、昔話みたいです。お調子者みたいな。おしゃべりなルートヴィッヒ(ベートーヴェン)は、全然おしゃべりな感じしないし。

結局、弾こうが弾かなかろうが、「アマデウス」が一番記号性があるし、語呂もいいから仕方が無いですね。「神に愛された」というのもキーポイント

だし。




好きな台詞 

*4巻 132ページ  ロビン=メイゼル 
「彼女が生きている時代にわたしが居合わせたことに ・・・ どんなに神に感謝したことか」

*7巻 83ページ  道原麻里
 「音楽ってなんでこんなにすごいんだろう あたし 自分が音楽を創り出す人間であることに誇りを感じるわ」

    この麻里の台詞でまた、「どうしてわたしには音楽の才能がないのだろうか!」と凄く悔しくなる。ただし、わたしもジャンルは違うけれど、例えば

    バレエだったり、染物だったりで、その世界に関われたことに誇りを持つ気持ちは良く分かる。自分は大したことなくても、その世界の素晴らしさを

    知れたり、その世界の凄い人と少々でも何かを共有できる喜びは大きい。メイゼル氏の台詞も、わたしはそういう風に受け取った。過去の演奏も

    レコードなどで聞けるし、先にも残るけれど、一緒の時代を生きるということはとっても凄いことだと思います。だから、舞台でも演奏でも、出来るだけ

    生で見るのが良いのは当たり前です。





さて、全然話は変わるが、羽宗の使ってる楽器は、1737年製の「グァルネリ・デル・ジェス」だそうだ。渋いね。ストラディヴァリウスではなく、グァルネリ。

しかも最高級の。さすがである。ということで、ここでヴァイオリンの銘器について。


ストラディヴァリウス・・・ Stradivarius  

                
弦楽器(特にヴァイオリン)の銘器の名前。イタリアの弦楽器職人、アントニオ・ストラディヴァリ(と、

                      息子フランチェスコとオモボノ
)が作った約千台のみのヴァイオリン(息子たちのも含めると3千くらい)。現存

                      するのは600くらいらしい。因みに、「ストラディヴァリ」をラテン語表記すると「ストラディヴァリウス」になるんだって。

                      製作者の名前はストラディヴァリだけど、楽器にはラテン語で表記してあるので、楽器の名前としては

                      「ストラディヴァリウス」なのだ。

                      数が少ないので、ストラディヴァリウスの値段は安くても数千万。高いものは何十億円にもなる。アントニオは、

                      設計図や製造工程のメモなどを死ぬ前に破棄してしまったので、どうやって作っていたのかは謎。現代の

                      技術を駆使して、ストラディヴァリウスを再現しようとしても、どうしても出来ないんだそうだ。まさに職人技。

                      というか、技術的に再現はできても、時を経た木やニスが創り出す音色は再現できない、ということらしい。

                      ストラドの中にも、色々なモデルがあって、特に銘器とされるものには愛称がついている。

                      ドルフィン、アラード、メシア、ブース、ルーシー、デュランティ、カンポセリーチェ、スギチェリ、ウィルへルミ

                      ハンメル、ヨアヒムなどが、わたしが聞いた事のあるもの。他にどのくらいあるのかは分からないが。

                      ダヴィンチってのも聞いたことあるなぁ。

                      中でもドルフィン(1714年製)、アラード(1715年)、メシア(メサイア。1716年)が、3大ストラディヴァリウスなんだ

                      そうだ。


                      日本人では、諏訪内晶子さんや、高嶋ちさ子さん、千住真理子さん庄司紗矢香さんなどがストラディヴァリウス

                      のヴァイオリンを使っている。

                      諏訪内さんは、1714年製の「ドルフィン」。才能を買われて、日本音楽財団が諏訪内さんに貸与しているのだ。

                      3大ストラディヴァリウスのうちの一つな訳だが、他の2つはコレクター(ヴァイオリニストでない)が持ってたり

                      美術館に飾られてたりだそうだ。つまり演奏されてるのはドルフィンのみ。もったいない。

                      高嶋さんは「ルーシー」(1736年)。2億ほどのヴァイオリンを自力で買った。その苦労話は徹子の部屋かスタジオ

                      パークで聞いたことがあるが、とても面白い話だった。

                      千住さんは「デュランティ」(1716年)を使用。何人かの候補者の中から選ばれたらしい。 

                      庄司さんは、「ヨアヒム」(1715年)。これも日本音楽財団から貸与されている。

                      男性では、五嶋龍さんが「エクス・ピエール・ローデ」というのを使っているそうだ。NPO法人の何とか(何だっけ)

                      というところから貸与されている。

                      五嶋龍さんのお姉さんの、五嶋みどりさんは、昔「ジュピター」(1722)を使っていた。これは既に日本音楽財団

                      に返却して、今は誰か別の人が使ってるんだって。

                      こういった高い銘器は、金持ちや法人が買って、有能なヴァイオリニストに貸し出すのが良いと思われる。

                      末永く残して行くことが、人類の使命だと思う。自分で購入した高嶋さんも、自分が弾けなくなったら、次の世代

                      へ引き渡すだろう。でもアノ人なら、墓まで持って行きそうで怖い。


                      現代のヴァイオリンにも、素晴らしい音の出るものも勿論たくさんあるけれど、今でもストラディヴァリウス・モデル

                      のヴァイオリン(ストラドの複製的ヴァイオリン。モデルにして作ったと言う意味ね。)がたくさん作られてるのだから、

                      多少伝説のようになってしまってはいるが、ストラディヴァリウスは魂の宿った素敵な楽器なことは間違いない、と

                      思うのだ。これだけ、いろんな噂が出るほどに、人の興味を引くのだから。

                      
グァルネリウス ・・・ Guarnerius

                  こちらもイタリアのヴァイオリン職人、グァルネリ一族による作品。とくに、バルトロメオ・ジュゼッペ・グァルネリの

                  制作したものは「デル・ジェス(del Gesu)」と呼ばれ、最高級品としてストラディヴァリウスと並ぶ名器である。

                  上にも書いた五嶋みどりさんは、昔はグァルネリ デル・ジェスの「エクス・ダヴィッド」というのを使っていたが、

                  ストラドを経て今は、デル・ジェスの別のを使ってるんだそうだ。名前忘れた。この楽器は、どこかの団体から

                  終身貸与されている。

                  川井郁子さんは、デル・ジェスの「ムンツ」(1737年)を使っていた。これも日本音楽財団からの貸与。


                  また、この2人の師匠である、アマティ一族の作った
アマティという

                  のも名器だそうだ。ヴァイオリニストのタイプによって、ストラディヴァリウスのほうが良い人もいるし、グァルネリ

                  のほうが、という人も勿論いるし、どれも高いから、どれが1番と言うことも無いけれど、知名度は間違いなく

                  ストラディヴァリウスが一番高いでしょう。

                  わたしは、「年月と共に、物には魂が宿る」ということを信じているので、ストラディヴァリウスが再現できないのも

                  うなずける。 これらのヴァイオリンは、贋作も沢山出回っている(○○モデルとかでなくね)。気をつけよう。


                  こうやって書き出してみると、諏訪内が一番高価なヴァイオリンを使ってますね〜。さすが。

                  ブランド名に踊らされるのはどうかと思うけれど、やはり300年とかたってもなお、人を惹きつけるだけのなにかは

                  間違いなくあるんでしょう。2億とか出しても欲しいくらいなんだから。





おしゃべりなアマデウス 人物関係図